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薬局アワードの審査員をしてきた
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    5/19、「第3回みんなで選ぶ薬局アワード」に行ってきた。

    「アンサングシンデレラ」が薬剤師界隈で盛り上がっているおかげで審査員として呼ばれたんだけど、私自身、普通のおっさんサラリーマンで、他の「○○代表」とか、「○○大学教授」とか、そんな方々と並列でいいのかしら、と思いつつ、楽しませていただいた。

     

    さて、薬局アワードとは何ぞや、ということだが、それぞれ独自の取り組みをしている薬局がプレゼンをして、「こんな薬局に行きたい」と思う施設に投票するイベントだ。

    うまく説明できないので抜粋させてもらう。

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    【みんなで選ぶ 薬局アワード】
    イベントの目的は、「薬局ってどこも一緒じゃないの?」「信頼のおける薬局を探したい」そんな患者さんの疑問や要望に応えるべく、一般の方々に薬局の取り組みを知ってもらうこと。

    薬局アワードの代表薬局は、背景・思い、患者視点、独創性、社会性、再現性、将来性という6つの評価項目に基づき、1次審査、2次審査を経て6組の薬局が代表に選ばれる。
    そしてイベント当日、それぞれの取り組みについて代表薬局の発表を聞いた上で、薬局アワード来場者と審査員の投票により受賞薬局を決定する。

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    ということで、小難しい話ではなく、一般向けに「ウチはここが売りだ!」というプレゼン会のような雰囲気だった。

    やっている途中で気づいたんだけど、審査員8人のうち、現場の現役薬剤師って自分だけだった。

    ということで、薬剤師目線をまじえて振り返りつつ、コメントしてみたい。

     

    1.『地域の人々の健康的な生活を支えるため、専門スタッフによる、健康情報発信基地』オール薬局 (マイライフ株式会社)

    ローソンやタニタとコラボしつつ、ジムのようなものまで完備された複合施設、という印象だった。薬局の取り組みを紹介するというより、客に向けてのプレゼンのような印象を受けたのが残念だった。

    医療人としての思いだけではなく、ビジネスの印象を受けてしまった。

    離床マットの記録による睡眠薬の提案などは今後の可能性を感じた。

     

    2.『「トジスト」開発に至るまで –ホッチキスの針ゼロプロジェクト−』穴水あおば薬局 (株式会社ニイザ)

    審査員に理解が届かなかったのが残念だった。

    一包化や散剤の分包紙を圧着で留める、ただそれだけの機械。文房具に「ハリナックス」という針なしステープラーがあるが、それの進化版だと思ってもらえばいい。ただ、審査員たちはなんでそんなことをしなければいけないのかわからないようだった。

    朝なら朝で何包も飲まなきゃいけない人もいて、バラバラにならないように一日分ずつ綴じてあげることがある。ここでよく使われるのがホッチキスだが、穴が開いたりホッチキスの針を誤飲したりというリスクが生じる。そのため開発に至ったとのこと。

    薬剤師として話は理解できるが、この機械を必要とする薬局がどれだけあるか。10軒に1軒あればよい方だろうか。そんなニッチな機械を開発したことも評価できるが、これにGOを出したトップがすごい。アイディアや能力があっても、それを発揮できる場がなければ発展に繋がらない。

    薬剤師界には、こういった類の「軟膏練太郎」や「からやぶり」のような機械が存在する。この一角に食い込んでくるのでは、と思われた。ぜひ続けてニッチな道具を開発していただきたい。

     

    3.『薬局版こどもミュージアムプロジェクトがつくる優しい地域』エール薬局鴨居店 (株式会社スカイファルマ)

    アドヒアランスを上げるために、子供が書いた「おくすり飲んでね」というイラストを薬袋に印刷する取り組み紹介。

    スーパーなんかで、父の日や母の日や敬老の日に掲示される「お絵描き」だね。これを薬袋印刷に取り込むことで、アドヒアランスが上がったという。

    この発想はなかった。

    評価点として、全6薬局中の発表で一番やりやすく感じた。さらに、コストもかからないし、確実にアドヒアランスの向上が見込める。ジジババに対してだけではなく、小児のアドヒアランスも上がりそうだ。

    こういう取り組みは素敵だ。

     

    4.『地域を繋ぐ、笑顔のコミュニティスペースで健康づくり』まごころ薬局 (株式会社コーディアル)

    喋るのうまいなあ、と思って聞いていた。彼個人の魅力があり、患者との信頼関係があればこそ、素敵なコミュニティを創ることができたのだろう。90代とブログやFBでやりとりして、資産運用やら個展やらやって、完全に薬局の業務域を越えている。一介の職員がやったら怒られるかもしれない。

    ただ、これは楽しそうだ。

    薬剤師として働くにしても、患者としてかかわるにしても。

    他の人が同じようにやろうとしても難しいだろうが、「行きたい」と思わせるのはダントツだった。

     

    5.『特許申請中 携帯型医療用医薬品救急箱「ラクスリード」』薬局・なくすりーな (株式会社LLE)

    医療用医薬品で、要処方せん医薬品でないものを置き薬として渡しておき、不調時にそこから使ってもらう薬箱の開発(?)経緯。

    私的評価ポイントは、これが認められれば、薬剤師としての職能が一気に広がる、ということ。

    というのも、処方せん医薬品以外の医療用医薬品についても原則は処方せんによる交付、と厚労省通知に書かれている。現状薬剤師にできることはOTCを売るくらいだが、これが認められれば、使える薬が一気に増えることになる。

    問題は、EPAをOTCにするだけでえらい騒いでいる職能団体があるというのに、その壁を越えられるか、というところ。

    薬剤師も職能を生かせるし、医師も無駄な診察から解放されるし、医療費の節減にもなるし、是非国が進めてもらいたい。

     

    6.『スーパーマンはいらない みんなで支える在宅医療』まんまる薬局 (株式会社hitotofrom)

    在宅オンリーという、一風変わった薬局。非薬剤師が同じフィールドでボランチとして働くという。明確にボランチと命名した役割分担を行って、非薬剤師が活躍できるシーンを作っているのがよい。薬局勤務の非薬剤師、って、どうしても「自分は薬剤師じゃないし」といった意識で働いてしまう。

    聞いていて、病院でも非薬剤師が活躍できるシーンがあるのでは、と感じた。例えば、DI業務ってMRにやらせた方が慣れていそうだし早いのでは。システム担当はSEでよいだろうし、ピッキングについては通知が出たのが記憶に新しい。法律の縛りがまだまだありそうだが、非薬剤師が活躍できれば、その分薬剤師が違う業務を行える。

    元サッカー選手でMRを経て立ち上げた薬局とのことだが、現役時代はボランチでなくサイドバックだったと。

     

    いろんなことを考えている人がいて面白かった。

    ちなみに審査員控室が圏外だった。久し振りに見たよ圏外の表示。バリバリ東京都区内だというのに。

     

    | とみー(碧) | 薬剤師・薬学 | comments(0) | - |
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