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アンサングシンデレラ 第1話 医療原案メモ
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2018.07.04 Wednesday 21:28
「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり(荒井ママレ作)」がコミックゼノンではじまりました。医療原案担当です。
病院薬剤師が主人公の漫画、ということで、なぜか私に監修依頼が来まして、こころよくやらせていただいた次第です。
一話がまるごと試し読みできるので、知らない方はこちらをどうぞ。
http://www.comic-zenon.jp/magazine/unsung.html
せっかくなので、医療原案という立場って何をやっているのか、私が関わっているところを解説します。
ネタバレもあるので、ここから先は漫画を読んでからどうぞ。
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さて、つかみの第1話は薬剤師が活躍する話がいいね、というところから、薬剤師が関わったおかげで患者が助かる話を考えて、担当編集者さんと数パターン考えることに。
そして、漫画の通り、喫煙とテオフィリンの相互作用に落ち着いたが、そこにたどり着くまでかなり時間がかかっている。
はじめ編集者さんから提示されていた一例は、市販薬との相互作用(調子悪くて診察受けて薬をもらうけど、いまいちよくならないので市販薬を買って相互作用出て、それを薬剤師が見つける)だった。で、ロキソニンとクラビットの併用注意とか、抗生物質と金属系胃薬とか考えたんだけど、まあ弱い。ロキソニンとクラビットについては本当に危ないのかはっきりしないし、胃薬勝手に飲んで抗生物質効かなくても、そこまで緊急性はない。健康食品で相互作用起こしてもよかったけど、一般的なところから外れて、つかみが取れないのも困る。
ということで市販薬は諦めて、薬剤師なら知っている相互作用を数例あげて選んでいただいた。このほかにも、喫煙ではインスリンとの相互作用をあげていて、むしろそっちの方が自然かなー、と思っていた。
ここから先は荒井さんの力で、味気なかったテキストがネームとして出来上がってきた。
感動した。すげえ。
さすがプロ、話のつくり方もうまい。瀬野の喫煙と絡めるとか、それ以前に患者が「一服しててよ」というシーンがそもそも伏線だったのか、とか。他にもあるけど語りだすと長くなりそう&話がずれるので割愛。
そしてこの先、ネームから細かい部分を入れてくれ、と編集さんから指示が入り、数点セリフを考える。
たとえばこのシーンとか。
完全に間違っている処方なんだけど、薬剤師側じゃ判断できなくて通せない、という例。
ランソプラゾールを出したかったが使い方を間違えたのか、他の胃薬(1日3回で飲むタイプ)を出したかったのかわからない。それとも、他のラ行の薬と間違えたのかもしれない。
とはいえ、こんな内容で付きまとわれたら医師も怒るだろ。それがわかってくるから、年数経た薬剤師なら、この程度ではしつこく言わない。2年目のみどりならではといえる。
ということで、なかなかいい例になったかな。
他にも、
この、ペッ●ーくんのセリフ。考えたの忘れてた。
喋ってるセリフはコレ↓
「ボグリボースは糖尿病のお薬です。 食後では効果が出ませんので、必ず食直前にお飲みください。 おならが増えることがありますが、そういう作用のある薬なので心配はいりません」
専門的なセリフも出したけど、わかりやすいところでこれが選ばれたようで。
他にも、細かい言い回しを考えたりしている。
薬剤師という職業の実際が伝わればよいな、と思っているので、みなさん、応援よろしく。
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Comment
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2018/12/10 12:26 AM posted by: グッチー日経DIに紹介されていてこのマンガを知り、試し読みで第1話を電車の中で読みました。半泣きになってる自分がいました。ワタクシ、薬剤師歴22年越の病院薬剤師です。その足でコミックを買って帰りました。そうそう!そうなのよ、私たち頑張ってるのになかなかそれが伝わらないって。薬剤師にだって「おとなしい人」じゃない人間もおります。
うんうん。無かったんですよね、病院薬剤師の内幕のお話って。そろそろ私が書かなければ!と思っていたくらいでした(笑)
応援しています。ネタバレ見たくないので、コミックの続きの話数のブログは読みませんが。
新卒から急性期に3年、調剤薬局に2年、その後療養に15年(間で1年急性期に)、そして回復期で3年弱、今に至ります。
たぶん、ネタはめっちゃ持ってます。みどりちゃんのお友達として急性期の総合病院以外で働く病院薬剤師のネタが必要になったときは、ぜひご連絡下さい。